第255章

薬瓶の中身――それは解毒剤だった。

前回の失敗を踏まえ、川崎正弘は大西茂から特別に分けてもらっていた。九割方の薬なら、これで解ける。

野呂栞は薬瓶を見た瞬間、悟った。川崎正弘は裏で解毒剤を飲んでいたのだ。さっきの苦しそうな素振りは全部芝居。さっきまで罪悪感だの同情だの抱いていた自分が、ひたすら馬鹿みたいだった。

ばれたと見るや、川崎正弘は踵を返して全力疾走した。

「般若女、さっき言っただろ! これで俺たちの因縁はチャラだって!」

「チャラになるか、ボケ!」野呂栞がキレた。「止まりなさい!」

止まる?

そんなわけがない。

川崎正弘は、何よりも速く逃げる男だ。

あっという間にバ...

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